昨今空き家が増え続けている理由として空き家を取り壊すことで土地の固定資産税が跳ね上がること、そもそも建物の解体費用がかなり高額であることがあげられます。
このページでは空家等対策特別措置法について説明しています。空き家対策特別措置法の目的は何なのか?空家対策特別措置法の制定…
これらの理由から長らく空き家が放置され、新たな空き家を生み出す原因になっていました。
ところが平成27年2月27日に空家対策特別措置法が施行され、国が本格的に空き家対策に乗り出しました。
そこでこのページでは空家等対策特別措置法のとてもとても大雑把な概要についてわかりやすくご紹介します。
法律制定の背景(目的)
ということが法律制定の背景です。
まぁ要するに
空き家を放置すると防災・衛生・景観にとって好ましくないので、地域住民のために空き家をなんとかしましょう
ということです。
この法律の最大のポイント

これがこの法律の最大の目玉です。
市町村長が【特定空家等】の所有者に対して必要な措置を命じたにもかかわらず所有者がこれを実現しない場合には、市町村が所有者に代わって必要な措置を講じることができるということです。
そして必要な措置としては建物の取り壊し・解体まで行うことができるようになります。
これを代執行といいます。
行政側が所有者に代わって解体を執行することです。
なぜ取り壊しが困難なのか?
そもそも、なぜここまでガチガチに法律で制定しなければ自治体が空き家対策を行うことができなかったのでしょうか?
それは空き家といえども建物(不動産)である以上それは個人の私有財産の対象とみることができたからです。
国民は憲法により私有財産を形成することを保障されています。
要するに自分で土地を買ったり建物を建てて自分の財産にすることが憲法で保障されていて、これを法律の根拠なく公権力側が奪うということはできないとされています。
(中国では国土は基本的に国の所有であるため、一般人が国の関与を排除して土地を所有することはできません)
空き家といえども個人が形成した財産の一部であるため、行政側が法律の根拠なく空き家を取り壊し・解体することはできませんでした。
地方公共団体の中には空き家対策を条例化した自治体もあり、この条例に基づいて空き家を解体した自治体もありました。
しかし従来はこの条例も法律による後ろ盾がなかったため、空き家の解体までは踏み込めず、あくまで行政指導や単なる行政からの「お願い」しかできないケースもたくさんありました。
そのため行政側が国民が所有する建物(空き家)を取り壊し、解体するには法律の根拠(法律による後ろ盾)が必要だといわれてきました。
特定空家等とは?
法律の後ろ盾によって行政はどんな空き家でも取り壊せるようになったか!?
といえば、空家等対策特別措置法が制定された現在でも行政側で取り壊せる空き家はごく限定的な範囲にとどまります。
行政側で取り壊しの代執行が認められる空き家とは【特定空家等】に限られます。
①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にあると認められる空家等をいう
とされています。
上記①から④のいずれかに該当すれば【特定空家等】になります。
つまり単に人の住んでいない古い家というだけでは不十分ということです。
特定空家等にあたると判断されて初めて取り壊しの対象の空き家になります。
取壊費用は行政が負担?
行政の権限で特定空家等に指定された空き家を取り壊すならば、取壊費用は行政が負担するのか?
という疑問(期待?)もあります。
答えはノーです。
一時的には自治体が解体業者に費用を立替払いをしますが、自治体は代執行の費用を国税滞納処分と同じように徴収されることになります。
第六条 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
所有者の費用でやるべき取り壊しを自治体がお金を負担してやってくれる…なんていう甘いものではありません。
空き家は放置できなくなるのか?

従来は固定資産税に関する特例措置(建物が立っている土地の固定資産税は更地の3分の1~6分の1程度になる)を逆手にとって、使い道のない・人の住んでい建物(空き家)をそのまま残しておくということが行われていました。
まだ新しい建物であればイイのですが、古い建物を放置する建物はすぐに朽ちてきます。
人の使わなくなった建物の老朽化は驚くほど早いです。
この空き家対策のために制定された空家等対策特別措置法により「空き家を空き家として放置することができなくなったのか?」といえば
直ちにそういう事態にはならない
というのが答えです。
上記したとおり、行政側が公権力をもって解体できる空き家というのは、単に使われていない建物というだけでは足りず、特定空家等にあたることが条件になります。
この特定空家等にあたるといえるためには
①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にあると認められる空家等をいう
この①から④のいずれかに該当する必要があります。
そして①から④に該当するかどうかの判断は行政によって判断されることになります。
とはいえ、これら①から④のいずれかに該当するかどうか微妙なケースというのも少なくはありません。
特に『著しく…危険』とか『著しく…有害となる』とか『著しく景観を損なっている』という判断はどうしても主観に左右されやすいです。
その微妙なケースを自治体が自らの責任において積極的に判断するのか?といえば、それは自治体としても消極的になる可能性の方が高いでしょう。
(空家対策特別措置法が制定されたとはいえ)大前提として
「空き家といえども個人の私有財産である」
という考えに変わりはありません。
地方公共団体が自らの責任で『特定空家等』にあたるかどうかを積極的に判断していくというのはチョット想定し難いです。
国土交通省のガイドラインや他の自治体の運用状況を見ながら
誰が見ても特定空家等にあたると判断して差し支えないだろう
という空き家から代執行の対象になっていくと考えるべきです。
まとめ
◆この法律により自治体は空き家を取り壊しやすくなった
◆空き家を取り壊した費用は自治体が所有者から徴収する
◆空き家の中でも特に措置を講ずべき必要性の高い【特定空家等】が取り壊しの対象になる
◆特定空家等にあたるかどうかの判断は自治体が行う
◆特定空家等にあたるかどうかの判断は微妙なケースも多い
◆明らかに危険性の高い空き家から取り壊しの対象になると考えられる
空家対策特別措置法の制定によって自治体が代執行により空き家を取り壊す法律上の後ろ盾ができました。
自治体は以前よりも代執行により空き家を取り壊すハードルが下がりました。
しかし取り壊してもイイ空き家かどうかの判断は自治体に委ねられ、取り壊してもイイ空き家と判断するには微妙なケースも多々あります。
そのため自治体は放置すると明らかに危険な空き家から代執行の対象とすることが予想されるため、危険性のほとんどない単なる空き家は取り壊しの対象にはなりません(今のところ)。
ただし空き家を空き家として残しても良い事だけではありません。
土地の固定資産税の特例措置は受けられますが、適切に管理しなければ建物は老朽化する一方で、地域の防災上の観点から好ましくはありません。
空き家への対処・活用法については下記の記事も参考にしてみてください。
このページでは空家等対策特別措置法について説明しています。空き家対策特別措置法の目的は何なのか?空家対策特別措置法の制定…